03-3648-3622
東京都江東区東砂2丁目11-27[地図]
2020.02.13
カテゴリー:医療
皆さんは胸焼けしたりした事があるでしょうか。私はいつもではないですが、お酒を飲んですぐに横になったりすると胸焼けする事があります。
胸焼けの症状で頻度の多い病気に逆流性食道炎があります。
逆流性食道炎とは、強い胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜がただれたり、潰瘍(きず)ができる病気です。
胃からは胃液と呼ばれる消化液が出ています。胃液は強い酸性(塩酸です!)でこれにより食べ物を消化したり、入ってくる細菌やウイルスを消毒したりしています。胃の粘膜は強い酸性の中でも傷つかないように粘液を出しています。(それでも胃酸が多かったり、粘膜が弱っていると傷つく事があります…これが胃潰瘍です。)しかし、胃の手前にある食道は胃酸から身を守る働きがありません。胃と食道の間には逆流を防ぐ構造があり、本来は食道にはあまり胃酸が行かないようになっていますが、何らかの原因によりこの機能が低下すると、胃酸が食道に逆流し、食道粘膜が破壊されて、びらんや潰瘍が出来てしまいます。
胸やけ、げっぷ、呑酸(酸っぱい物や苦いものが上がって来るような感じです)、胸痛、嚥下障害(食べ物がのみこみにくい)などの症状が出る事が多いです。
体を横にすると症状が出やすくなります。また、呼吸器疾患との区別が必要ですが、咳が長く続くなども逆流性食道炎が原因となって起こる事も多いです。
Fスケールという自己診断できるものがありますのでこちらを利用してみても良いでしょう。合計8点以上なら逆流性食道炎の疑いがありますので一度検査を受けることをお勧めします。
質問 | ない | まれに | 時々 | しばしば | いつも |
---|---|---|---|---|---|
胸やけがしますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
おなかがはることがありますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
食事をした後に胃が重苦しい(もたれる)ことがありますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
思わず手のひらで胸をこすってしまうことがありますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
食べたあと気持ちが悪くなることがありますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
食後に胸やけがおこりますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
喉(のど)の違和感(ヒリヒリなど)がありますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
食事の途中で満腹になってしまいますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
ものを飲み込むと、つかえることがありますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
苦い水(胃酸)が上がってくることがありますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
ゲップがよくでますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
前かがみをすると胸やけがしますか? | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
食道と胃の境界には下部食道括約筋(Lower Esophageal Sphincter:LESと略します)と呼ばれる筋肉があり、胃から食道に物が逆流してこないようにしています。この筋肉の衰えたり、うまく機能しない、もしくは腹圧が強すぎたり胃酸が多すぎることなどが原因となってきます。
これらを引き起こす主な原因として加齢による筋肉などの衰え、食生活、肥満、強い腹圧など、生活習慣の要素が強いものが挙げられます。LESも筋肉ですので加齢に伴う筋肉の衰えによって胃酸の逆流をうまく防げなくなってきます。食生活では、胃酸の分泌が促進される・消化に時間がかかるものを習慣的に多く食べることで逆流性食道炎のリスクが上がります。近年になって日本でも逆流性食道炎の患者様が増えているのは、動物性脂肪や肉類の摂取量が増えたことと関係していると考えられています。肥満や姿勢の悪さ、重いものを日常的に持ち上げる、ウエストのきつい衣類などは腹圧を上げて胃液の逆流を起こしやすくします。また、括約筋がうまく機能しない原因として多いのが食道裂孔ヘルニアです。胸部と腹部を分ける横隔膜には食道が通る食道裂孔がありますが、この部分の筋肉や靭帯が加齢などによって緩むと食道裂孔ヘルニア(本来お腹の中にある胃の一部が、胸部に脱出してしまう状態)になって胃液の逆流を起こしやすくなります。
まずは医療機関を受診してみてください。胸やけやみぞおちの痛みといった症状は、食道がん、狭心症、心筋梗塞など、逆流性食道炎以外の病気で出ることもありますので、しっかりとした診断をつける必要があります。内視鏡を行い、食道粘膜の状態を確認します。白っぽい、赤い色調変化、びらんや潰瘍があるなど、粘膜の状態をしっかり確認します。実際にはあまり変化がない場合や食道の病気でも食道がんやカンジダ(カビ)や好酸球性食道炎(アレルギー疾患の一種です)などがある場合もあるため、内視鏡検査で粘膜の状態をしっかり確認する事はとても大切です。
治療はしっかりと薬物療法を行えば多くの場合は速やかに改善します。胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)や胃酸から粘膜を守る薬、胃の動きをよくする薬などを使用して、強い酸が食道に逆流してこないようにします。重症な場合やなかなか治らない場合は鼻から食道にチューブを入れてpH(酸性度)や、液体などが逆流していないか測る検査をしたり、外科手術(食道の周り胃にを縫い付ける手術や、リングを胃と食道の境界に入れる手術)が必要になる場合もありますが、そこまでの必要がある場合は非常に稀です。また、改善後は生活指導を行い、再発を予防します。
日常生活の主なご注意は以下の通りです。
脂肪が多いもの、香辛料、甘いもの、チョコレートなどを控え、食べ過ぎないようにしてください。アルコールやカフェインもとり過ぎないように心がけ、たばこもやめましょう。常時胃の中に物が入っていると胃酸が出続けるので3食を規則的にとって、間食はやめましょう。
食後、2時間以上たってから就寝するようにします。横になると胸やけや咳などの症状が出やすい場合は、上半身を高くしたり、または右を下にして寝ると症状を抑えられる場合があります。
肥満は腹圧が上がる原因となるので解消した方が良いでしょう。また、ウエストを強く締め付ける服装はやめましょう。前屈み、猫背にならないようにして、正しい姿勢を保つよう心がけてください。
胃薬は市販薬も多数ありますが、逆流性食道炎と思っても他の病気が隠れている事もあります。また症状や食道粘膜の状態に応じて治療を進めていく事が重要ですので、ご心配な方はお近くの消化器内科にご相談ください。
COPYRIGHT ©2020 AKAHANE CLINIC. ALL RIGHTS RESERVED.
このページの上部へ