赤羽根医院

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赤羽根医院ブログ

長く続くお腹の痛みや下痢は炎症性腸疾患のサインかも。原因を調べよう。

2020.07.09

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今回は潰瘍性大腸炎とクローン病という二つの病気のお話です。これらの病気はいずれも長く続く下痢や血便、お腹の痛みなどの不調の原因となっていることが多く、なおかつ大腸内視鏡検査を行わないと診断できないため注意が必要な病気です。(状態によっては、慣れた医師ならば肛門を見るだけであたりをつけることは可能ですが、診断するためにはやはり内視鏡検査が必要です。)これら二つの病気は全然違う部分もありますが似ている部分もあるので、まとめて炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれています。

これら二つの似ている部分は、これといって何かばい菌がいたりするわけではないのに腸の炎症が続くというところです。また、いずれの病気も免疫系の異常や腸内細菌のバランスの狂いなどが原因となっていることが分かっていますが、今のところは原因が一つには絞り切れない状態であり、根本的な治療法も開発されていないという点でも同じです。
症状としてお腹の痛みや下痢が長く続く、という点では共通ですが、潰瘍性大腸炎は血や粘液の混じった便が多く、クローン病は水のような下痢が多いなど、傾向の違いがあります。
炎症の起こる場所や特徴的な画像の所見などはお互いに異なりますが、互いにオーバーラップする部分もあり、時にはどちらかに確定診断がつかない場合もあります。

潰瘍性大腸炎は長期間にわたり大腸に炎症が起こる病気

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の 炎症性疾患 です。特徴的な症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。また、大腸以外の腸には通常炎症を起こさないことがクローン病との大きな違いとなっています。(関節や皮膚など腸管外の症状はいくつかあります)有名人でもこの病気になった人は多く、最近では安倍元首相もそうですしケネディ元大統領なども潰瘍性大腸炎だったといわれています。

潰瘍性大腸炎は若い人と50代で起きることが多い

わが国の潰瘍性大腸炎の患者数は166,060人(平成25年度末の医療受給者証および登録者証交付件数の合計)、人口10万人あたり100人程度です。欧米と比べて少なかったのですが、年々増加傾向にあります。若い方に多いとされてきましたが、最近では50代で発症することも多いことがわかっています。以前は全例が難病として認定されていましたが、最近では症状の軽い方は認定してもらえないようになりつつあります。

特徴的な症状は粘液や血が混じった便としぶりばら

特徴的な症状は、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。また、粘液と血が交じりあった便(粘血便)が出たりするのも一つの特徴です。微熱が出ることもありますが、重くなってくると38度以上の熱が出てくる場合もあります。場合によっては腸が動かなくなって腸閉塞を起こしたりする場合もあります。(中毒性巨大結腸症といってこの場合には緊急手術が必要になります。)また、長期に炎症が続くことによって大腸がんの原因になることが知られています。(潰瘍性大腸炎から発症する大腸がんの場合は大腸のあらゆるところから癌ができる可能性があるため、大腸をすべて取る(全摘する)必要があります。)潰瘍性大腸炎の治療の目的は症状を抑えるだけでなく、炎症を抑えることによって大腸がんを予防したり、定期的な検査によって大腸がんを早期に発見することもあります。

どうやって診断する?

大腸内視鏡検査や細胞の検査(こちらも内視鏡検査で採取します)で特徴的な所見が認められると診断できます。内視鏡の所見でよく見られるのは、ざらざらした感じの粘膜や白い小さな膿、出血などです。ただ、こうした所見自体は他の腸炎でも見られることはありますので、最終的には採血や便の培養なども必要です。
お尻からの出血が続いている、下痢やお腹の痛みが続くなどの場合にはお近くの肛門科や消化器内科にご相談ください。

潰瘍性大腸炎を発症している腸

治療

様々な治療を組み合わせて治療を行いますが、まだ完全に治るような治療法は存在しないのが現状です。ただし、症状が出ないようにする治療については日々進歩してきています。(大腸をすべて取ってしまうと良くなることが多いですが、そこまでするのは緊急時や大腸がんができてしまった時だけです。)当院は症状の状態に応じて副作用の少ない治療から行っています。大腸の内視鏡検査などで病気の状態を確認しながら治療を行っていますが、中には副作用の多い治療や高価な治療(生物学的製剤や白血球除去療法など)もあります。重症の患者様に対してはこれらの治療を行ったりしていますが、高価な治療などについてはできるだけ難病の指定を取って行うなど患者様と相談しながら進めさせていただいています。

5ASA製剤 

もっとも基本的な治療です。腸の炎症を抑える作用のある薬で、飲み薬や坐薬、注腸製剤など様々な種類の薬があり、病気の程度や場所によって使い分けます。潰瘍性大腸炎の患者さんの多くは5ASA製剤のみでも落ち着いた状態(寛解状態)が得られます。逆に、落ち着いている方でもこの薬をやめてしまうと病気が再び悪化する(再燃する)場合がありますのでご注意ください。比較的副作用は少ないですが、まれに脱毛やアレルギーなどの副作用が出る人もいます。

ステロイド剤 

5ASA製剤の次によく使われますが、位置付けとしては短期的なリリーフとしての使用が多いです。免疫機能を強力に抑え、炎症をおさめてくれます。飲み薬や注射がありますが、注腸製剤や注腸フォーム(髭剃りの泡をお尻に入れるイメージです。)製剤などが潰瘍性大腸炎のために作られています。ただし、免疫を強力に、広範囲に抑えてくれる分、長期に使うと様々な副作用があるため、できるだけ短期の使用にとどめるのが理想的です。注腸製剤や注腸フォームなどの外用薬は飲み薬に比べると副作用が少ないため、少し長めに使えますが、それでもあまり長期に使うことはすすめられていません。

免疫抑制剤

文字通り免疫を抑える薬です。ステロイド剤でも良くならない場合などに短期のリリーフとして使用するほか、ステロイドを使用していないとすぐに状態が悪くなってしまう方で、長期的に炎症が再燃しないように(病状が悪化すること)使用する場合もあります。とても効果的な薬ですが、使いすぎるとばい菌やウイルスに感染しやすくなってしまったりするので、効果や副作用を確認するために定期的な血液検査が必要です。

血液浄化療法

腎不全の方が行う透析治療に似た治療です。腕の血管から血液を抜いて、フィルターを通した後に血管に戻すという治療を週に一度程度の頻度で行います。潰瘍性大腸炎の方の場合、このフィルターで白血球や顆粒球(ばい菌と戦い、炎症を起こす細胞)を除去します。ステロイド剤を使用しても良くならない場合などに行います。専用の設備が必要で、毎回血管に針を刺し、1時間ほど寝ている必要がありますので楽な治療とは言えませんが高い効果を発揮する場合もあります。

生物学的製剤

最近よく使われるようになってきている治療法です。生物学的製剤自体は様々な治療に使われるようになっており(抗がん剤やアレルギー疾患など)その作用もたくさんの種類があります。
潰瘍性大腸炎の治療で使用する場合は、TNF-なんとかとか、インターロイキンほにゃららなどといった免疫機能の一部分のみを強力にブロックする人工的な抗体を注射します。
潰瘍性大腸炎の患者さんは免疫機能の一部が暴走して活発になっていることがわかっているので、この一部分をブロックすることで、(ステロイドのように免疫機能の全部を低下させるのに比べて)大きな副作用を起こすことなく炎症を抑えることができます。
良い治療法ではあるのですが非常に高価なのが難点です。難病の指定を取っていると一定の負担以内で収めることが可能です。

手術治療

潰瘍性大腸炎は通常、大腸のみに起こる病気なので大腸を取ってしまえば治ります。(実際にはお尻の方にわずかに残った大腸や繋いだ小腸の一部(回腸嚢といいます)に炎症を起こすことがあるのでそこまで単純な話ではなかったりもします)また、大腸は栄養の吸収はしておらず水を吸収しているだけなのでとってしまっても生きていくことはできます。ただし、いくらすべて取ってしまって大丈夫といっても実際には色々な問題が起こります。そのため、手術で大腸を取ってしまうのは二つの場合に限られます。
中毒性巨大結腸症といわれる状態:この状態では腸が動かなくなってしまい、腸内細菌が出すガスが大腸にたまってしまうとともに、腸内の細菌が血管に流れ込んでしまいます。この状態になると命にかかわるため、手術で大腸を取ってしまいます。
潰瘍性大腸炎による大腸がんができたとき:潰瘍性大腸炎によって長期にわたって腸に炎症が起こり続けると、大腸にがんが起こりやすい状態になります。潰瘍性大腸炎によって大腸がんが起こった場合は、そこだけ手術でとっても大腸の他の場所にもすぐにがんができる可能性があるため、大腸をすべて取ってしまいます。

クローン病

クローン病も腸管に持続的に炎症を起こす病気です。潰瘍性大腸炎とは自分の免疫機構が暴走してしまうことによって腸の炎症を起こすという点においてはよく似ていますが、炎症を起こす範囲や合併症、特徴的な画像所見などは少し違いがあります。

若年での発症が多い

クローン病の日本での罹患者数は約4万人以上で、潰瘍性大腸炎よりは罹患者数は少ないですが、徐々に増加傾向にあります。発症年齢は10歳代から20歳代に多く見られ、逆に潰瘍性大腸炎で見られる中高年での発症はほとんどありません。

出やすい症状

潰瘍性大腸炎の場合は渋り腹(便意があるのに便が出ない)や粘血便(粘液交じりの血便)、血便などが主な症状ですが、クロ-ン病では下痢や腹痛、肛門痛などが主な症状となります。もちろんクロ-ン病でも血便などの症状が出ることはあります。

クローン病は胃腸全体に炎症が起こる。

潰瘍性大腸炎はほとんどの場合は大腸のみに炎症が起こりますが、クローン病の場合は胃や小腸などにも炎症が起こります。肛門や回腸末端部など、特に炎症を起こしやすい場所が複数存在してはいますが、これらの場所だけでなくあらゆるところで炎症を起こす場合があります。このため、クローン病が疑われた場合には大腸だけでなく胃や小腸などの検査を追加する場合もあります。また、単に炎症を起こすだけでなく体の色々な場所で狭窄(狭くなる)や瘻孔(穴が開いて繋がる)などが起こります。(しばしばみられるのは肛門部の痔瘻や、腸と腸などですが、直腸と膣、腸管と膀胱などそれ以外の場所で瘻孔ができることもしばしばあります)

クローン病の手術は根治的なものではない

潰瘍性大腸炎については(大腸をすべて取ってしまうという大きな手術ではありますが)手術をしてしまうとほぼ完治する病気です。しかしながらクロ-ン病については手術をしても根治するというものではありません。クロ-ン病の手術は狭窄による腸閉塞や腸の穿孔、瘻孔などの緊急事態に対処するために行うものであり、クローン病の状態が悪い方は何回も手術を繰り返す場合があります。

肛門に特有の病変が現れる

クローン病の方の肛門には特徴的な病変が現れることがあります。当院は肛門科のため時々目にすることがあります。痔瘻と呼ばれる肛門付近の穴や特徴的な切れ痔などが見られます。また、これらのために肛門自体が狭くなってしまうこともあります。これらについても適宜手術などの治療をしますが、繰り返すこともあるため、重症の場合は人工肛門となる事もあります。

クロ-ン病の治療

潰瘍性大腸炎と同様に、様々な治療を組み合わせて治療を行いますが、まだ根治的な治療法は存在しないのが現状です。ただし、症状が出ないようにする治療については日々進歩が見られています。使用する薬についてはクロ-ン病でも潰瘍性大腸炎のものと似た者を使用することが多いですが、小腸でも病変がおこるため、内服薬については潰瘍性大腸炎有効成分は同じでも吸収のされ方などが異なる薬があります。免疫抑制剤や顆粒球・白血球除去療法(透析のような装置で血液の中の白血球や顆粒球を取り除く治療)や生物学的製剤などについてはクロ-ン病でも行われています。(むしろ潰瘍性大腸炎の場合より積極的に行われることが多いです。)
クローン病では完治がしづらいこと、状態が悪いと手術を何回も行う必要があることなどから潰瘍性大腸炎以上に症状を抑えるだけでなく炎症自体を抑えることが重要となります。比較的早い段階から生物学的製剤を使用し、炎症そのものをできるだけ抑え、病気の進行を遅らせるという、トップダウン治療と呼ばれる治療法が近年では注目されています。

困った症状があれば、お近くの消化器内科や肛門科にご相談ください。
当院の大腸内視鏡検査についてはこちらをご覧ください。
消化器内科についてはこちらをご覧ください。

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