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2020.10.22
カテゴリー:医療
いぼ痔の手術というと痛いのではないか、何日も入院しないといけないのではないか、などと心配して来院される方が多くいます。
実際には、いぼ痔の治療も日々進歩しており、痛みの少ない治療法なども出てきています。
体への負担の少ない治療法として、比較的新しく最近注目されているのが注射の治療(ジオン硬化療法、ALTA療法、切らない痔の治療などとも呼ばれます)です。近年では行う施設も増えてきており当院でも注射療法が使用できる患者さんには良く行っています。
このジオン注射が登場することによっていぼ痔の治療の幅もひろがり、患者さんにも新たな(痛みの少ない)治療の選択肢が増えました。とても良い治療ではあるのですが、適切に使用しないと問題が起こる事があります。また、いぼ痔の人でも注射療法が適切な方とそうでない方がいるため、十分な経験のある医師の見極めが必要になります。
今回はこの注射療法についてご説明します。
さて、治療自体の説明をする前に、そもそいぼ痔とは何なのかを簡単に解説する必要があります。
いぼ痔というのは肛門の近くにある血管と線維の塊のような組織(内痔核)がゆるんでしまう。あるいは強くいきむことで血管に負担がかかり、組織が大きくなってきたものです。
痛みの神経のない場所なので、腫れたりしなければ痛くはならないことが多いですが、あまり大きくなってくると
・排便時や歩くときなどにお尻の外に出てきてしまい、邪魔な感じがする
・粘液がついて下着が汚れてしまう
・排便時のいきみなどにより出血する
などの症状が出ます。
いぼ痔について詳しい説明を読みたい場合は「おしりの出血 いぼ痔に手術は必要なの?」をご覧ください。
ジオン注射はいぼ痔を「固めて」しまう治療です。
いぼ痔というのは肛門の近くにある血管の塊のような組織(内痔核)がゆるんでしまってできたものですが、手術ではこのいぼ痔を「切り取って」しまうのに対して、注射の治療はいぼ痔を「固めて」しまう治療なのです。いぼ痔の治療としては比較的新しく、平成16年に7月に承認されました。下の画像のように4か所に注射を行うので4段階注射法とも呼ばれます。注射を行うことによって緩んでいたいぼ痔は数日のうちに固まってきます。
いぼ痔が固まることによって脱出する感じがなくなったり、出血が治まったりします。また、痔が「固まる」ことによっていぼ痔への血流が減り、いぼ痔が少し小さくなることもあります。
注射療法が手術治療に対して優れているのは、何と言っても痛みが少ないことです。手術については痛みを減らすために色々な努力がされているとはいえ、手術中はともかく、「術後に全然痛くない」というのはかなり困難です。これに対して注射療法では体にメスを入れず、また痛みのないところに注射をするため、正常な経過ではほとんど痛みがありません。
また、手術では一定の確率で(1%未満の確率ですが)手術後に出血をしたりする場合があります。このため、手術を行った方の場合、全然痛くないという人でも術後しばらくは運動や力仕事については避けてもらっています。その他の合併症についても、注射療法の方が少ないとされています。やはり体にメスを入れたり傷を作ったりしないというのは大きな違いのようです。
また、それ以外の面でも手術という言葉を聞いて、なんとなく怖さや不安を感じている方にもお勧めできる治療法です。
先ほどのものと少し被る部分がありますが、注射療法では比較的時間が取れない場合にも治療を行うことができます。手術では一定の確率で(1%未満の確率ですが)手術後に出血をしたりする場合があります。このため、手術を行った方の場合、全然痛くないという人でも術後しばらくは運動や力仕事については避けてもらっています。注射療法ではこれらの問題があまり起こらないため、忙しい方や、出張が多い方、力仕事を休めない方でも比較的安全に行うことができます。
高齢の方や心臓が悪い方、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方などは手術を行う際に問題が起こりやすい場合があります。特にあまり命にかかわることのないいぼ痔の治療としてはできるだけ体に負担をかけない治療法を選択したいところです。この際には
ジオン注射を打つことができるのはあくまで肛門の中にあるいぼ痔(内痔核)です。このため、いぼ痔のパターンにより使用できない、もしくは使用に適さない場合があります。
1.外痔核(お尻の外側のいぼ痔)や皮膚のたるみが大きくなっている場合
外痔核(お尻の外側のいぼ痔)や皮膚のたるみが大きくなっている場合には使用することができません。(もしもこれらの場所に使用するとお尻が腫れあがり、強い痛みが出てしまう可能性があります)
2.明らかに肛門の外に飛び出てくるような大きないぼ痔の場合
また、肛門の中にあるいぼ痔でも明らかに肛門の外に飛び出てくるような大きないぼ痔の場合、すぐに再発してしまう事もあるため、手術の方をお勧めする場合もあります。(ご本人の希望が強い場合や体に色々な病気を抱えている場合には注射療法を行うこともあります)
また、大きすぎるいぼ痔に対して硬化療法を行った場合、便の引っかかる感じや違和感が強くなってしまう事もあります。
また、切れ痔や痔ろうなど、いぼ痔以外の痔には使用できないため、これらについてはやはり手術が必要になります。
これらの見極めをしっかりつけてもらうためにも、手術の治療についても十分な経験のある肛門科での施術をお勧めします。
硬化療法はあくまで痔を「固めて」しまう治療法であり、痔がなくなってしまうわけではありません。このため、お尻から常に出ているような大きな痔に対して注射療法を行った場合には便が引っかかる感じが強く出たりします。また、それだけでなく大きな痔に対して治療を行った場合は1-2年のうちに再発してしまう場合も多いです。
注射療法の再発率は3-16%と幅がありますが、これは術後1年のものですので長期的に(5年や10年などで)みるともう少し再発率は高いかもしれません。また、比較的新しい治療法であることもあり、長期でどれぐらい再発があるかという点についてはまだわかっていません。ただし、再発した場合でも、もう一度注射療法を行うことも可能です。
ジオン注射は高齢の方や心臓が悪い方、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方などでも安全に行うことができます。しかし、これでも分類としては手術であり、「切る痔の治療」と比べれば少ないものの、いくつかの問題は起こる事があります。
1.便が引っかかる感じが出ることがある
注射療法では、いぼ痔を切り取ってしまうわけではないため、いぼ痔は硬くなって出っ張らなくなりますが、そのまま残ります。このため、特にもともと大きないぼ痔があった方の場合、治療後に便が引っかかる感じや、出づらい感じがするときがあります。通常はしばらくするとなじんできますので、便を軟らかくする薬などで対処します。
2.一時的な出血や肛門潰瘍
注射療法では大量に出血することはありませんが、注射薬(ALTA)の刺激で肛門の近くに炎症が起こり、潰瘍(粘膜にできる「きず」のことです)ができたりします。術後2-4週間程度で起こることが多く、通常は塗り薬などで治っていくことが多いです。
3.腎臓があまりにも悪い人は使うことができない
腎臓というのは血液から様々な毒や老廃物をろ過しておしっこを作る臓器です。注射療法の薬はおしっこから出ていくとされています。このため、あまりにも腎臓が悪い方は注射療法を行うことができません。
状態については治療を行う前に血液検査などで確認させてもらいます。
硬化療法(ジオン注射・ALTA療法)を手術と比べたときにもっとも問題となるのは再発率です。
それ以外にも問題は起こることはありますが、手術に比べると問題が起こる事は少なく、逆に手術を行った内痔核ではすぐに再発することはめったにないからです。
ジオン注射の再発率は3-16%と幅がありますが、これは術後1年の段階で調べたものですので長期的に(5年などで)みるともう少し再発率が高い可能性があります。
ただ、硬化療法は一度行うともう一度行う事はできないのではないかと思われる方も多いのですが、実際には硬化療法は適応がある限りは何度でも行うことができます。
もちろん、ジオン注射を行ってもすぐに出てきてしまうような場合は手術をお勧めしますが、数年後に出てくるといった状態であれば繰り返して治療を行うことは十分に可能です。
このようにジオン注射は簡便で、行いやすい治療ではありますが、使用できるかどうか十分な見極めが必要になること、注射では対応できないいぼ痔の場合には手術を行う必要があることから手術の治療についても十分な経験のあるクリニックで行うことをお勧めします。また、当院では注射療法に加えて注射と手術を組み合わせた治療なども行っております。
排便するときにお尻が出っ張る、出血するけれども、手術は怖い、という方は、お近くの肛門科でご相談ください。
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